(引用)
>じつは、私たちが見慣れた身の周りの世界に、そうした力学の仕組みがいろいろある。たとえば、もちつき。
引き延ばされては折り畳み、ペッタン、ペッタンとやる。それを繰り返すことで、もち米が細部までつきこま
れてゆく西欧では、パンを焼くときに小麦粉をこねるのに、同様の動作をする。だから、そうしたタイプの写
像を、数学の世界では「パイこね変換」とか「パン屋の変換」などと呼ぶ。(中略)どうして、この程度のも
のが、カオスの複雑さという「数学的モンスター」を生み出してしまうのだろうか。答えは、写像の際限なき
反復という点にある。
(中略)さて、この引き延ばして折り畳む写像の反復は、無限に入れ子的になった複雑な力学模様を織り上げ
る。いわゆる、フラクタル的な構造ともいえる。ただし、カオスの力学でだいじなことは、要するにこの構造
の中で、じっと静かにはしていないことである。
(Ref:沼田寛著 「複雑系」がよくわかる本,p.100)